〈食と美と健康〉ストレスと上手に付き合おう:楽しい食事を
ストレスがなくなったら、我々は快適な生活を送れるだろうか? ストレスには良いものと悪いものがあるといわれるが、恐らく、ストレスのないことがストレスとなるのではないでしょうか。それならば、如何にストレスと上手に付き合うかといったセルフコントロールが重要になります。その要因の一つとして、食事との関連が注目されています。
アメリカのマサチューセッツ工科大学のリチャード・ワートマン教授によれば、ニューヨークなどの高緯度地方では、冬になるとうつ病になる人が多いという。これらの患者は、不安や緊張が高まり、気分を落ち着かせるために、発作的に糖質(炭水化物)を食べたくなる。しかし、春になると躁状態になり、炭水化物に対する渇望はおさまる。これは、脳内調節物質のメラトニン・セロトニンの作用により、また、食事の影響を受けます。
65歳から91歳までの高齢者を対象にした栄養調査の結果によると、いずれかのビタミンが欠乏していると思われる人は、興奮しやすく・疲れやすく・意気消沈しやすいうえに不安感をもち・怒りっぽいことが報告されています。このことは、栄養素欠乏が我々の行動に影響を及ぼしていることを示しています。ビタミンを含むドリンク剤は疲労回復だけでなくストレス軽減に有効であるかもしれません。
ある種の犯罪・非行と食事との関連性については、例えば、砂糖を過剰に摂取した時、食物アレルギー・食品添加物に対する反応、ビタミン・ミネラルが不足した時、ある種のミネラル毒性の反映として、牛乳過剰摂取によることなどが引き金になっているという可能性が考えられています。また別の疫学的調査によれば、低血糖時に犯罪行動を起こしやすいことが報告されています。このように食事の内容によりストレスや犯罪が起こったりします。
楽しく食事することにより、身体では副交感神経系の機能が高まります。その時はまさにリラックスした状態であり、消化機能も高まり・心臓は比較的ゆっくりと拍動し血圧も下がり、うとうとした心地よい気分になります。緊張するお見合いの席での食事は、体にはよくないでしょう。
食事の際に、あるいは食後に、香り豊かなお茶を飲めば、緑茶特有アミノ酸であるテアニンのリラックス作用と相まって、さらにゆったりとした状態をもたらすと思われます。この様に、バランスの良い健全な食生活はストレス解消の一番手っ取り早い方法になると思われます。
静岡県立大学名誉教授
農学博士 横越英彦 著
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