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茶柱コラム

〈食と美と健康〉実験動物を用いた行動試験法:不安行動                    

 昨今の世界情勢は、ウクライナとロシアだけの問題ではなく、世界各地で紛争が起こっている。日本を取り巻く環境においても不安になることは多い。もちろん不安の元凶を取り除くことが必要だが、こういった不安感情を少しでも減らし、健やかな暮らしができないかを考えることも大切である。それは、加齢に伴う脳機能の衰えのせいばかりではないような気もする。

 食べ物と脳機能との関係が明らかになってきたが、不安に対してはどのように研究してきたかを、私が用いた実験手法(動物実験)の一部を紹介する。

高架式T字迷路試験(Elevated T-maze Test):T-maze装置は、3本の等しい大きさのアーム(9cmx50cm)でT字型に構成した。1本はアームの両側に高さ40㎝のプラスチック製の壁がある。残りの2本のアームには壁がなく、1本目の先端に左右対称に取り付けた。ラットも、高所では不安がるようなので、装置の高さは床上70cmとした。大まかな手順を紹介すると、壁のあるアームの末端にラットの頭をmazeの中央方向に向けて置き、壁の無い別のアームに出るまでの時間を計測した(測定は4本すべての手肢が出るまでとした)。次いで、試験サンプルを投与し、いったん飼育室に戻し、30分後に、前と同じ方法で測定した。また、別の試験では、ラットを片方の壁の無いアームの末端に頭をmazeの中央方向に向けて置き、そこから壁付のアームに侵入するまでの時間を計測した。このようにラットが高さへの不安を感じて逃避するまでの行動を観察した。

高架式十字迷路試験 (Elevated Plus Maze Test):床から約1mの高さのところに幅9cmの十字型の装置を作り、一方のアームは、そのままで、もう片方のアームには、アクリル板で壁を作ります。ラットを十字のクロスの真ん中に静置すると、その場から立ち去ろうとウロウロします。その際に、高いところに不安をより感じているラットは、壁のある方をより歩き回りますが、高さに不安の少ないラットはどちらにも行ったり来たりします。そこで、全体の行動量に対して、どちらのアームをより探索していたかで不安の強さを算出します。食べ物と不安情動との関係で不安行動が抑制されていると判断された場合、脳内でどのような変化が起こっていたかを、各種の神経伝達物質(セロトニン、ドーパミン、エピネフリン、アセチルコリン)などを測定して解析します。

 お茶を飲んだ時のリラックス感は、不安の除去にもなります。新茶が出始める時期になりましたので、美味しいお茶をありがたく飲み、心の浄化に役立てたいものです。

〈2023年5月 / 茶柱コラムより :旧竹沢製茶HPに掲載分〉

静岡県立大学名誉教授
農学博士  横越英彦   著

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