竹沢製茶 静岡の製茶問屋、ODM / OEM

News

お知らせ

茶柱コラム

〈食と美と健康〉茶カテキンの吸収と代謝―どの位、吸収されるの?                      

 カテキン「catechin」は、ポリフェノールの一種で、昔からタンニンと呼ばれてきたお茶の渋みの主成分です。 その語源は、インドなどに自生しているアカシアの一種、カテキュー(catechu、マメ科アカシア属の低木)に由来しており、19世紀の中ごろにカテキューの樹液から抽出した無色の結晶物が「カテキン」と名づけられました。中国では紀元前から、お茶は養生の仙薬としても、よく飲まれていたそうです。

 茶カテキン類には、多くの生理機能のあることが研究されていますが、飲用した時に、それが体内に吸収され、ある程度の濃度に保たれていなければ、効能を示すことはないでしょう。そこで、茶カテキン類の吸収や体内動態について、考えてみましょう。

カテキンの生体内動態

 カテキンには、抗酸化作用、抗菌、抗変異・抗ガン作用、抗ウイルス作用、抗アレルギー作用などがあり、これらの作用は、主に実験動物や培養細胞を用いて証明されていますが、ヒトでの実証報告は少ない現状です。カテキンが生体内でその効能を発揮するには、消化管内壁に直接作用する場合を除いて、消化管から吸収され血液中に移る必要があります。ラットの実験では,体重1kgあたり100mgの EGCGを経口投与すると1時間で血中の濃度は最大になるが、濃度はわずか数%です。すなわち、摂取したカテキンの5∼8% が胃や小腸上部から吸収され、その一部が粘膜上皮細胞で抱合反応を受け、さらに門脈血を経て肝臓に運ばれたカテキンはそこで一部がさらに抱合され、また一部は遊離型のまま血流に入り、末梢組織まで運ばれます。

 一方、ヒトがお茶の1~2杯分に相当するカテキンを飲用すると、1~2時間後には、血中のカテキン濃度は最大になり、その後、速やかに減少し、半日後には、ほとんど消失します。ヒトでの茶カテキンの代謝速度は比較的速いので、体内にある程度のカテキンを維持するためには、頻繁に飲用することが必要です。ヒトでも、吸収されたカテキンは、その後、抱合化、メチル化といったラットと同様な代謝をうけていると思われます。しかし、血液中の代謝物はラットでは、主要代謝物がグルクロン酸抱合体やメチル化体であるのに対し、ヒトではそれらに加えて硫酸抱合体も相当量含まれており、ラットとヒトとでは多少の違いがあります。

カテキンを体内に保つためには

 カテキンの生理機能を十分に発揮させるためには、多くのカテキンを含む緑茶を飲むこと、また、お茶を頻繁に飲むこと、あるいは、如何にしたら、カテキンの腸管での吸収量を高めることができるかなどの基礎研究が必要です。 

 コロナ対策で緑茶のちょび飲みが注目されました。気分転換の意味も含めて、お茶の一服は精神と身体にとっても大切なことなんだと、あらためて思いましたね。

〈2022年6月 / 茶柱コラムより :旧竹沢製茶HPに掲載分〉

静岡県立大学名誉教授
農学博士  横越英彦   著

-

この記事をシェアする