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茶柱コラム

〈食と美と健康〉和食のすすめ:味のハーモニー                 

五感栄養学って何?

 和食といえば懐石料理が代表格ですが、懐石料理はただ美味しさだけでなく、香り・彩り、盛りつけ・形にまで十分な配慮があり、私たちの五感をすべて刺激します。まさに総合芸術と言えるのではないでしょうか。順番にお皿が出てくる西洋料理と違い、多くの場合、和食は一度に提供されます。すなわち、膳に盛られた色々な料理の中から自分で選んで食べることになります。和食は海の物(魚・海草・磯物)、野の物(緑色野菜・豆・根菜類)、山の物、さらに家畜類の肉・卵など多種多様な食材をもちい、また、目で見て楽しめるほど多くの料理を食卓に並べる習慣があるので、全ての食物に対して食欲を感じなければなりません。それ故、どれをつまむかは本人の好みにより左右されるのです。

 食べ物は、消化・吸収されてからが栄養学ではなく、五感に及ぼす影響を調べることも栄養学であり、私はそれゆえ五感栄養学とよんでいるのです。

体調を反映した迷い箸 

 私達は、好みに応じて、食べたい物をお互いに箸で取って食べています。そのために、箸にまつわる色々な作法や礼儀があります。その中で、迷い箸は不作法とされています、しかし生理学的にはその人の食欲を反映しており、好ましい点もあると思われています。無理に食べるのとは違います。食卓に並んだ料理の中で、あっさりとした物、こってりとした物、甘い物、あるいは辛い物と、まず、食べたいと思った物を食欲に応じて皿に取り、そして今度は、色々な組み合わせで食することにより(口内調理)、バラエティーに富んだその時の自分にあったものになるのです。

口内調理の多様性(お茶の役割)

 口内調理する場合、御飯は都合の良い働きをします。米は最も淡泊な味と香りを持っており、どんな味の料理とも合うし、口の中でそれらが混ざり合って、色々な味のハーモニーが作り出されます。口の中に、こってりとした味が残っている場合には、御飯を口にし、あっさりとした料理を食べ、次の味に挑みます。お茶や吸い物、漬け物なども、味のバラエティーを引き出します。また、味噌汁も米と同じように素材として面白いといえます。白味噌・赤味噌あるいは甘口・辛口などと色々な種類がありますが、どの味噌でも色々な具(魚介類・肉・野菜・根菜類)と良くあいます。この様に迷い箸ができ、口内調理を楽しむことが和食の特徴と思われます。特にお茶は、味の基本味(甘味・酸味・塩味・苦味・旨味)が強くはないので、口内のフレッシュ化、口内調理に重要です。立ち食いや時間に追われた食事、また一人での食事(孤食:個食)ではなく、色々な味を楽しみながら、また、お茶の良さを利用して、穏やかな食事の時間を持ちたいものです。

 このコロナ禍では、食のもっている根源的な価値が改めて問われている気がします。食は私達のくらしの基本なのですから。

〈2020年11月 / 茶柱コラムより :旧竹沢製茶HPに掲載分〉

静岡県立大学名誉教授
農学博士  横越英彦   著

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