〈食と美と健康〉ギャバ(GABA)と機能性表示食品
緑茶に含まれるテアニンには、動物実験では記憶・学習能の改善効果、また、ヒトでは、リラックス作用のあることが明らかになっています。テアニンと化学構造が似て、今注目されているギャバ(GABA:γ―アミノ酪酸)も緑茶に含まれるので、その生理を調べてみました。
まず動物実験でギャバによる脳内神経伝達物質への影響と、また、いくつかの記憶学習試験でも効果を観察しました。そして次に、ヒトでの抗ストレス作用を明らかにしたのです。その後、ギャバチョコレートの開発にかかわったことから、多くの関心を持たれました。私の関わった素材のGABAについても、多くの機能性表示食品が生まれています。例えば、磐田市からは、ギャバの機能から「クラウンメロン、アローマメロン」、「プリンセスパプリカ」、「旬搾り青汁GABAケール」、「GABA Max玄氣」などが出ています。
ギャバチョコレート:チョコレートの材料であるカカオには、もともとギャバが含まれており、ギャバ含量を増やしたギャバチョコを用いました。小学生、大学生に単純計算(内田クレペリンテスト)をしてもらい、解答数と正解率を求めると、ギャバ含有チョコレートの摂取で成績が上がったのです。次いで、精神的なストレスや計算ストレスを負荷した直後の唾液中のクロモグラニンA(CgA)濃度を測定しました。CgAは精神的ストレス状態では値が高く、リラックス状態では値が低下します。そこでギャバの有無によるチョコレートを食べ、その後に各種ストレスを負荷して、唾液中のCgAを経時的に分析したのです。結果、ギャバチョコの摂取により著しくCgAが低下したのです。ヒトは極度の緊張状態では、本来の能力を発揮できません。ある程度リラックスした状態がよいのです。そこで、仕事や試験の合間の休憩時に少し頬張ることは、脳にとっても良いと思われます。ギャバは、ストレス軽減やイライラした時の心の安らぎの機能をも期待できますし、睡眠改善などの多くの機能性表示食品が生まれました。ストレスの多い現代人にとってはまさに、必須の食品成分といえるでしょう。
ギャバ茶:約30年前に島田市金谷の農研機構果樹茶業研究部門でギャバロン茶が開発されました。その頃、ウーロン茶の人気も高く、同じく嫌気処理をしていることからギャバロン茶とよばれていました。しかし、緑茶とは異なる特有の香りなどにより、消費は伸びず、生産を止めた茶業者も多かったのです。私は、静岡県の産学研究プロジェクトとして、このギャバロン茶のメンタル面への影響を調べ、また、その復興を望んでいます。なぜなら、ヒトボランティアにギャバロン茶を飲んでもらい、その後、ストレス負荷試験を行った結果、緊張・不安、怒り・敵意、疲労感が低下し、一方、活力感が上がったのです。お茶は嗜好飲料であり、メンタル面への影響も大切です。香り、味、色合いなどは重要であるが、飲んだ時の結果効果も少し考えてみてはどうだろうか。私は、ギャバ名はすでに認知されているので、その名を利用し、ギャバ茶とよんでいます。
(月刊「茶」2019/10月号、参照)
〈2020年10月 / 茶柱コラムより :旧竹沢製茶HPに掲載分〉
静岡県立大学名誉教授
農学博士 横越英彦 著
-