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茶柱コラム

〈食と美と健康〉お茶の渋味は万能:五感に訴えるお茶の美味しさ                      

お茶を飲むとき

 のどが渇いたときは、水でも良いが、一服したいときはお茶がいい。日本人には、淡い黄緑色に落ち着きを感じるし、穏やかな香りも良い。一口飲んだだけで強い甘さを感じるドリンクは多くあるが、淡白な、しかも、多少渋味のある味も、年配者にとっては好まれる。後味もすっきりしている。戦後生まれの私にとって、小さい時には、出来るだけ甘いもの、カロリーのある飲料や食物は、生きる上で必須であった。しかし、今日、日本においては食があふれており、摂取カロリーオーバーによる弊害がみられる。健康志向の高まりから、食の重要性が問われ、緑茶の効能も注目されてきた。茶産業の振興を考えたとき、海外に受け入れられるかを調べたことがある。すると、日本人には好まれるものが、外国人には必ずしも受け入れられないことを知った。例えば、お茶の色は、茶葉そのものの色を反映しているので、草のしぼり汁をイメージし、香り雑草を、そして、渋味や苦みを好まない点も分かった。

お茶の成分

 お茶は、生活習慣病を予防する、いろいろな効能が明らかになり、嗜好飲料であり健康飲料でもある。「喫茶養生記」の序文の冒頭にも「茶は養生の仙薬なり。延齢の妙術なり。山谷これを生ずれば,その地神霊なり。人倫これを採れば、その人長命なり。云々」と、お茶を飲むのが長寿の秘訣と思われる。超高齢社会の日本では、そのうち茶寿(108歳)が平均寿命になるかもしれない。緑茶は各種ビタミン(A、C、E)やミネラル(カリウム、リン、微量必須元素)だけでなく、苦みや興奮作用を有するカフェイン、渋味に関するカテキン、旨味に関するアミノ酸などが含まれている。その他、糖質、食物繊維、フラボノール誘導体などが含まれ、健康を保持する様々な生理機能を持つ飲料である。

喫茶とガン予防

 30年ほど前に、静岡県のお茶どころ中川根町では、胃がんによる年齢調整した死亡比が低く、全国平均100に対し、男性では20.8、女性では29.2という驚くべき結果が発表された。その後、動物実験、培養細胞実験でもカテキンによる発がん率の低下が報告された。人に対しても抗がん作用があるかは確定していないが、最近の疫学調査研究では、お茶を飲む人は胃がん、前立腺がん、肝がん、卵巣がん、子宮内膜がんなどの危険性が低かったという報告がある。

今後、お茶に含まれる成分の健康維持作用について取り上げてみたい。

〈2020年8月 / 茶柱コラムより :旧竹沢製茶HPに掲載分〉

静岡県立大学名誉教授
農学博士  横越英彦   著

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