〈食と美と健康〉季節の食材を楽しむ
超高齢社会へ
2013年に「和食 日本人の伝統的な食文化」がユネスコ(国連教育科学文化機関)の無形文化遺産に登録された。和食(日本人の食生活)の良さは、味覚、健康面など様々な面から検討されているが、特筆すべきは,日本が世界最長寿国であることだ。これには日本人の食生活が大きく関わっている。
総人口に占める65歳以上の老年人口(高齢者)の割合により,高齢化社会、高齢社会、超高齢社会と便宜上いっているが、日本では、1995年(平成7年)に高齢社会、2007年(平成19年)に超高齢社会に突入している。高齢者が増え、団塊の世代は生きづらくなってきたが、健康で長生きできることは、最も幸福なことである。
キンさんギンさん
人間の最大寿命は古代から殆ど変わっておらず、大体100歳であり,最大値をとっても120歳近辺である。そこで、どのようにしたら最大寿命まで生きることが出来るのかを、以前マスコミで100歳の双子姉妹として取り上げられた「キンさんギンさん」について触れてみたい。キンさんギンさんがあれだけ国民の人気と共感を呼んだのは,勿論ご両人のキャラクターにもよるが、単に長寿であるというだけでなく、元気(健康)で長生きしていたからではなかったか。核家族化された現代社会において、私達がどこか忘れてきた暖かい古里といったようなものを、あの屈託のない笑い顔の中に、そして年輪を感じさせる二人の絶妙な会話の中に感じ取っていたのではないか。秘訣は、「生きがいと社会との絆をもつこと」です。
和食のすすめ
食べ物は何がお好きですか?という問いかけに、「肉でも野菜でも何でも食べます。昔は麦飯ばっかりであったが好きで頂きました」。煮魚も好物であるが,特にお刺身が好きで,キンさんは「赤身の刺身」、ギンさんは「白身の刺身」を毎日食べていたということが伝えられている。高齢になると一般にさっぱりとした食事を好むようになり、タンパク質が不足しがちになるが、刺身や肉でしっかりと補給している。これといった特別な長寿メニューがあるわけではないが、昔風の田舎料理が健康には良いのかも知れない。和食と日本食とは何が違うのかなど議論はあるが、私は、「日本で一般に食べられている食」と広義に解釈している。「和食」の食文化には、日本人が自然を尊重し、また日本の地理的な特徴から、四季折々の新鮮な野菜や果物、また、海の幸も季節変動があり、それが食文化や伝統的な食しかたに生かされている。この和食文化の中には、必ず、おいしい緑茶がある。
(月刊「茶」2019/1月号引用)
〈2020年4月 / 茶柱コラムより :旧竹沢製茶HPに掲載分〉
静岡県立大学名誉教授
農学博士 横越英彦 著
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