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茶柱コラム

〈食と美と健康〉食欲は生きるため

食べ物とは?

 人や動物は食べないと生きていけない。なぜなのか?食べ物はエネルギー源といわれる。自動車はガソリンが切れれば止まる。電化製品は電気を切れば、作動しない。しかし、ガソリンや電気を補えばまた動き始める。しかし、人の場合、食事が切れてしまうと再び与えても再生しない。大きな違いがある。

エネルギー源といえば燃料であり、薪や炭、石油や石炭を連想する。これらの燃料と、食べ物とは関係があるのだろうか?結論から言えば、食べ物は人間が生きていくうえで必要な燃料である。薪は燃えるとき酸素を利用し、炭酸ガスを排出する。人間も呼吸により酸素を吸入し炭酸ガスを呼気中に出す。薪は燃えると熱を出し、人は体温として熱を出す。

呼吸とは?

 物が燃えることと呼吸をすることは科学的には全く同じ現象であり、このことを明確に証明したのは、フランスの科学者のラボアジェである。「呼吸とは体成分を燃焼すること」という概念を確立し、体内燃料の補給が食物である。なぜ食べるのか?食物とは何か?という重要な概念を確立した彼は「栄養学の父」といわれる。ラボアジェは、さらに人の実験を行い、気温の変化・食事中・空腹時・休息時・労働時間中などの呼吸を調べ、人は体を動かすとき、また、体温を必要とするとき、より多くの食物を燃やすために、より多くの酸素を消費することを証明した。

時代の流れの中で

 このような偉大な科学者であったが、時代はヨーロッパに革命の嵐が吹き荒れているときであった。ラボアジェは、当時、貴族を除く最高の身分である徴税請負人(少人数からなる役職で、莫大な利益のある仕事)であり、それゆえ、フランス革命が起こったとき、真っ先に逮捕され、その後ギロチンに掛けられてしまった。「彼の首は一瞬にして断たれたが、それと同じ頭脳が再び現れるには百年またねばならない」と、数学者ラグランジュは嘆いたといわれている。

私の専門分野は、栄養学(栄養化学・栄養神経科学)であり、食と健康(心と美)に関して研究・教育してきた。栄養学における常識的なことも、科学者の実証の積み重ねにより確立されており、健康にとって一番肝心な「食物」「緑茶」に関しても、その意味することを話題提供できればと思っています。

〈2020年3月 / 茶柱コラムより :旧竹沢製茶HPに掲載分〉

静岡県立大学名誉教授
農学博士  横越英彦   著

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