〈食と美と健康〉縁起の良いお茶:こころの健康
お茶は縁起がいいもの
お茶は縁起がいいものだと知っていましたか?摘んでも摘んでも芽が出てくるお茶の木は「お芽出たい」といわれます。また、長寿を祝う言葉に喜寿、米寿などがありますが、「茶寿」というのもあります。茶の漢字を分解し合計した108歳のお祝いを指します。茶寿のお祝いにはお茶を贈ることもあるようです。
ゆったり楽しむ 除夜のお茶
お正月の準備も一段落した大晦日、茶道の世界では、一年の締めくくりとなるお茶を一同で楽しむ除夜釜(じょやがま)という茶事があります。日が暮れたころから始まる除夜釜は、ろうそくや火鉢の灯りだけで行われる風情あふれる行事です。大晦日の夜、一年を振り返りながら、のんびりとお茶を楽しむのも素敵な時間の過ごし方かもしれません。
正月には縁起の良い「大福茶」を
晴れやかな新年の始まりには、一年の無病息災を願うお宮参りと同様、京都を中心とした関西地方でよく飲まれる福茶はどうでしょうか。年明け最初の一杯は、若水(わかみず)と呼ばれる元日の早朝に汲んだ最初の水でいれた「福茶」が振る舞われます。若水は、心身の清め水として古くから大切に用いられてきました。福茶はその水でわかした煎茶のことで、地域によっては「大福茶」(おおぶくちゃ)とも呼ばれ、名前からも縁起がいい。それに、縁起の良い「梅」干しや「結び昆布」などを加えることもあります。新年に大福茶を飲む風習は、約千年前から始まります。大福茶を飲めば邪気が払われ新しい一年に幸福をもたらすといわれています。このように、年の始めに厳かな気持ちで、丁寧に好みのお茶をいれる時間をもつだけで十分に福を招いてくれることでしょう。
福茶の由来とは
季節の移り変わりは、和菓子にもあらわれます。うぐいす餅もその一つだが、花びら餅が店頭に出ることがある。花びら餅とは、京都でお正月に食べられる伝統の和菓子で、大福茶と一緒に花びら餅を食べるのが一般的だそうです。白味噌のあんと鮎に見立てたゴボウを求肥(ぎゅうひ)に包んだ縁起物です。福茶の発端は、天暦5年(951年)、空也上人が疫病の流行に際して梅干しの入ったお茶を病に苦しむ人々に振る舞うと疫病は下火となり、その後、村上天皇もお正月にこのお茶を飲んだとのこと。村上天皇が飲んだお茶から、「皇服茶」と名付けられ、「皇服茶」は幸福と関連づけて、「大福」の文字が当てられたといわれています。
〈2021年1月 / 茶柱コラムより :旧竹沢製茶HPに掲載分〉
静岡県立大学名誉教授
農学博士 横越英彦 著
-