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〈食と美と健康〉飴とサツマイモは同じ炭水化物?:栄養素の多様性                     

先に、子供のおやつの効能について述べた時に、炭水化物の摂取により脳内セロトニンが増加することを述べましたが、その点についてもう少し説明いたします。

 ご存じのように、炭水化物(糖質)を摂取すると、それが消化・吸収されて血糖が増加します。すると、この糖を体内で有効に利用するために膵臓からはインシュリンが分泌されます。インシュリンは糖の体内利用を促進すると同時に、タンパク質の合成なども促進します。タンパク質の合成にはアミノ酸が利用されるので、血液に含まれているアミノ酸が利用されることになります。ただし、アミノ酸の種類により、その利用のされ方が異なるため、個々の血中アミノ酸の濃度も変化します。タンパク質合成に多く利用されるアミノ酸は、他のアミノ酸と比較して大きく減少します。血中のアミノ酸は、血液脳関門を介してお互いに競合しながら脳に取り込まれます。糖を摂取した時には、結果として血中アミノ酸のトリプトファンが脳に入りやすくなり、脳内のトリプトファンが増え、それから合成される神経伝達物質のセロトニンも増加します。飴(砂糖)やサツマイモ(澱粉)には炭水化物が含まれますが、その消化・吸収に違いがあるため、インスリン分泌に差が生じ、脳内セロトニンの増加にも違いが出ます。

 食欲の調節には多くの因子が関わっており複雑ですが、セロトニンもその一つではないかと考えられています。お腹が空いた時にご飯を食べますが、永遠に食べ続けることはなく、そのうち食べるのをやめます。それは、食事には多くの炭水化物が含まれており、腹いっぱいご飯を食べると、脳内セロトニンが増え、それにより脳内の満腹中枢が刺激され、食べるのをやめ、逆にお腹が空くときにはセロトニンが少なくなり摂食中枢が刺激され、食べ始めるという、自動調節機構があるという考え方です。満腹中枢を破壊された猫(実験動物)は、餌があれば永遠と食べ続けます。ラットを利用した私の実験でも、糖の摂取により速やかに脳内セロトニンは増加しました。食事内容の違いにより、この自動調節機構が働かなくなる場合があり、これが暴食を招き肥満につながるのではないかとも考えられています。

 神経が高ぶっているときの睡眠障害に対しては、セロトニンによるリラクゼーション効果を利用した眠りの改善も考えられています。脳内エネルギーが少ない時には、糖の摂取で脳機能は改善されます。糖の摂取と脳内セロトニンとの関係から食事内容をうまく考えることにより体に備わっている摂食の自動調節機能を利用し、肥満の防止や、快眠への利用もあるかもしれません。お茶に含まれるテアニンもリラクゼーション効果があり、一役を担っていると思われます。

静岡県立大学名誉教授
農学博士  横越英彦   著

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