〈食と美と健康〉お茶の魅力:爽やかな目覚めに一杯
「人生100年時代」といわれるように誰しも健康で長生きしたいですよね。地域にはいくつかの健康ランドやトレーニングジムがあり、スポーツやヨガなどで身体の柔軟性を維持し、肥満にならないように水泳や食事に注意する人が増えています。
健康に必要な要素は、運動、栄養、睡眠(休養)が大切といわれています。それぞれはお互いに影響しあっていますが、その中の栄養(食)について考えてみましょう。食べ物と健康と関係のあることは容易に想像がつきます。また、最近、食品の機能という言葉をよく耳にし、ある素材を摂取すると生活習慣病の予防になるということで、特定保健用食品や機能性表示食品などが注目されています。食品が何らかの機能を持つことは当たり前のことで、役割の無い食品はありません。すなわち、食品は体に有用な機能があるので、それを摂取するのです。そこで、食べ物であれば何でも良いかというと、そうでもなさそうです。例えば、血圧や血中コレステロールが少し高いと言われたら、それらを改善するような食を求めるのも自然です。そのように食品に何らかの生理機能を求めるのも理解できますが、日常、知らないうちに摂取していて、それが身体に有益な作用をしている食品があれば、それが重要な食品といえるのではないでしょうか。お茶は、その最たるものと思われます。
お茶はどんな時に飲みますか。おそらく一昔前と違って、お茶を飲む機会や形態も随分変わってきているのではないでしょうか。そこで、まず一日のはじめ、朝の目覚めにはどうでしょうか。朝起きた時に、コップ一杯の白湯を飲むことは水分補給の面から勧められています。寝覚めが悪かった場合や、早朝の爽やかさを求めるなら、好みにもよりますがお茶がおすすめです。「朝茶は七里帰っても飲め」「朝茶に別れるな」「朝茶は福が増す」など、朝にお茶を飲むことは、災いを逃れ、縁起の良いものと言い伝えられています。お茶にはカフェインが含まれており、中枢神経に働きかけて目覚めを手助けしてくれます。温かいお茶は体内を温めて体を動きやすくし、お茶のさわやかな香りは鼻から脳への心地よい刺激となります。覚醒機能を持つカフェインによるかは定かではありませんが、朝お茶を飲むと体に良いというのが、昔から実感としてあったのですね。
お茶にも色々な種類がありますが、どのお茶が良いのでしょうか。これは、どうも年齢に依存しているようです。年配者は、お茶の色味や、少し苦みのある中に爽やかさを感じるので、玉露や抹茶を好むのではないでしょうか。一方、若者は、苦みの少ない、少し甘みを感じる煎茶などを好むのではないでしょうか。いずれにしてもお茶には中枢神経を興奮させるカフェインや、逆に副交感神経を高めリラックス効果を持つテアニンが同時に含まれているので、さわやかな目覚めに有効なのではないでしょうか。
お茶を飲んだ時のリラックス感は、ストレスの除去にもなります。たまには少し早起きをして、自分や家族のためにゆっくりと一杯のお茶を淹れて、爽やかな一日のスタートにしてみてはどうでしょうか。
静岡県立大学名誉教授
農学博士 横越英彦 著
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