〈食と美と健康〉実験動物を用いた行動試験法:ストレス負荷試験
高ストレス社会といわれるように、多くの国民は何らかのストレスに晒されています。痛みなどの身体的ストレスから心の病のような精神的ストレスまで、ストレスにも色々あります。また、ある程度のストレスは身体にとって有益であるともいわれます。いずれにしても、ストレスに晒されると身体にはストレス反応が起こります。正確には、ストレスの原因となる刺激をストレッサーと呼び、心理面、身体面、行動面の反応として現れる生体反応をストレスと呼んでいます。
多様なストレッサーにより誘起された非特異的な生体内の防御反応をストレスと定義し、その反応を汎適応症候群としました。これには3段階あり、警告反応期、抵抗期、疲弊期です。ストレスに晒された場合、まず初めに、ストレスに耐えるために自律神経系(内分泌系も含まれる)を総動員して対応(警告反応期)します。適応反応が維持されていれば良いのですが、長期間続くと生体は抵抗しきれなくなり疲弊し、病気となって現れます。ストレスに晒された場合、その生体反応を少しでも抑えることができれば、発症までいかないのではないでしょうか。美味しいものを食べれば幸せ感があり、お茶を飲めば、ほっとした気分になります。すなわち、食べ物とストレスとの関係をどのように研究して来たかを、私が用いた一つの実験手法(動物実験)を紹介します。
■コミュニケーションボックス (Communication Box) 試験
不透明なアクリル板の箱の床には電流が流れるステンレス製のグリッド(直径0.5mm)が1.0cm間隔で敷いてあり、箱の中は透明なプラスチック板で16~25の区画に仕切られています。各区画は10㎝x 10㎝x 45㎝(高さ)の大きさで、それぞれの区画は直接電気刺激を受ける区画と、プラスチック製のショック回避プレートを敷くことによる電気刺激を受けない区画を交互に配置しました。電気刺激(電流強度は5mA、5秒間通電、25秒間休憩を交互に30分間)を受けたラットは当然、飛び跳ね悲鳴をあげます(身体的ストレス)。隣り合う周りの部屋のラットは、電気刺激はないものの強い恐怖を与えられ不安を感じます(精神的ストレス)。この箱は、身体的ストレスと精神的ストレスの両方を負荷することができます。
ラットに予め調べたい試料を与え、その1~2時間後に、ラットを各小部屋に移し電気ショックの有無を与える試験をします。ストレス負荷後に、ストレスを与えなかったラットの行動解析と比較します。試料投与によるストレス軽減作用が観察された場合、血液中のストレス指標を測定し、また、その際の脳部位について各種の神経伝達物質(セロトニン、ドーパミン、エピネフリン、アセチルコリン)などを測定します。
お茶を飲んだ時のリラックス感は、ストレスの除去にもなります。テアニンを多く含む新茶が今年も出ています。美味しいお茶をゆったりと楽しみたいものですね。
静岡県立大学名誉教授
農学博士 横越英彦 著
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