〈食と美と健康〉実験動物を用いた行動試験法:抗うつ作用
超高齢社会、あるいは高ストレス社会の中で社会問題化しているのは、脳機能の不調に基づく認知症(アルツハイマー病、パーキンソン病)などであり、また、うつ病などの「心の病」である。あらゆる世代の人に掛かってくる様々なストレスが、その引き金になっているともいわれる。それ故、そのストレスを取り除くことができれば良いのだが、そうはいかないことが多い。そこで、抗うつ薬や不安感情を抑える可能性のある食品の開発が考えられており、以下に、私達が用いた実験方法を紹介する。
わが国では、うつ病の診断項目として抑うつ気分・食欲低下・睡眠障害・焦燥感・易疲労性・思考力低下・自殺願望が2週間以上続くかなどがある。WHOの調査によると自殺者の8割以上が生前うつ病であったことが分かり、うつ病が引き起こす問題は深刻である。
強制水泳試験法Forced Swimming Test (FST)。FSTはPorsoltらにより報告され、ラットを用いた抗うつ病のスクリーニング法である。円筒の筒に水を入れ、その中にラットを入れると、最初は逃げ出せないかと激しく泳ぐが、筒から出れないと感じると次第に泳ぐことをあきらめ、動かなくなる。これは逃避するために有効な手段がないとあきらめた状態である。このほとんど泳がない時間を無動時間という。ラットに予め抗うつ薬を投与しておくと、この無動時間の短縮が認められるので、抗うつ作用の判断に利用できる。
【強制水泳試験とは...】ラットを脱出不可能な円柱で泳がせ、脱出をあきらめた「無動時間」を測定する試験で広く利用されている抗うつ薬のスクリーニング方法である。
オープンフィールド試験Open Field Test (OFT)。OFTは1986年にCarlinらによって報告された。黒いプラスチック製の正方形のボックスの中にラットを入れ、ビデオカメラを用いてラットの行動を記録し、それを解析することにより行動量や不安を測定する方法である。すべての試験は暗室で赤色灯のもとで、CCDカメラを用いて撮影し、行動量と不安指標の解析ソフトを用いて測定した。
【オープンフィールド試験とは...】ラットを箱の中央に静かにおき、5分間の移動距離を求め自発行動量を測定する試験である。
お茶を飲むと、何か落ち着いた気分が得られる。我々は、ヒトを対象に調べた結果でも、お茶(テアニン)の摂取により、α波(脳波)の放出頻度の上がることからリラックス効果のあることを明らかにした。ストレスを軽減することから、うつなどの気分障害に対しても有効であると思われる。美味しいお茶をありがたく飲み、こころの浄化に役立てたい。
〈2023年4月 / 茶柱コラムより :旧竹沢製茶HPに掲載分〉
静岡県立大学名誉教授
農学博士 横越英彦 著
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