〈食と美と健康〉オリーブオイル―芳醇な味と香りで心身健康?
地中海型食事
地中海型料理の特徴は、野菜、サラダ、果物、穀類、パスタ、パン、豆類やドライフルーツなどの植物性食品が多く、一方、肉類、家禽、乳製品や卵の摂取が控えめで、主な油脂源がオリーブオイルであることです。オリーブオイルは一価不飽和脂肪酸のオレイン酸が特に多いことが知られています。すなわち、炭水化物と食物繊維が多く、飽和脂肪酸が少なく、一価不飽和脂肪酸の摂取が多いのです。この地中海式の食事が注目を集めたきっかけは、南イタリアの田舎で生活した経験を持つ米国ミネソタ大学疫学教授のアンセル・キースが、イタリア料理の素晴らしさの本を出したからと言われています。動物性脂肪の摂取が少ない地中海沿岸の諸国では、北欧や米国と比べて、心血管障害(冠状動脈硬化症)の発症が三分の一以下という報告がされています。食事中の脂肪量を比較しても、地中海式と北欧の食事では差がなかったが、質の違いがありました。すなわち、地中海式料理で摂る油は、オリーブオイルや魚の油が中心で不飽和脂肪酸が多く、一方、北欧型の食事では、バターや肉類の油が中心で飽和脂肪酸が多かったのです。
動脈硬化の予防
飽和脂肪酸を多く含む食事はLDL(低密度リポタンパク質)、VLDL(超低密度リポタンパク質)及びHDL(高密度リポタンパク質)などあらゆるリポタンパク質のレベルをあげます。一方、一価不飽和脂肪酸が多く、飽和脂肪酸の少ない食事は、LDLとVLDLの濃度を下げるが、HDLの濃度は下げません。多価不飽和脂肪酸の多い食事は、HDLを初めとするリポタンパク質の濃度を低下させます。一価不飽和脂肪酸の場合、HDLは小型になり流動性も高まり、コレステロールの放出を促進するので、心臓血管系の疾病の予防に役立つと考えられています。また、一価不飽和脂肪酸がコレステロールとLDLを低下させるだけでなく、動脈閉鎖や心筋梗塞を引き起こすアテローム性動脈硬化の予防にも関与しています。すなわち、アテローム性動脈硬化の発症の初期段階の重要な因子としてLDLの酸化があるが、この酸化に対する抵抗力が多価不飽和脂肪酸よりも大きいことです。バージンオリーブオイルは、実を搾ったままのエキスであり、ポリフェノール、ビタミンEやミネラル、多くの抗酸化成分が含まれています。
肌の老化防止
オリーブオイルは、保湿力が高く肌荒れや皮膚の損傷発生を予防し、皮膚の老化現象を低下させてくれます。すなわち、老化現象の引き金となるフリーラジカルを捕捉する成分が含まれており、酸化防止(アンチエイジング)に効果があります。「若返りビタミン」と呼ばれるビタミンEも多く、皮膚の老化防止に役立っています。オリーブオイルは、超高齢化社会において健康・長寿を維持するための有効な食材であるかも知れます。食は医といえますね。
〈2022年9月 / 茶柱コラムより :旧竹沢製茶HPに掲載分〉
静岡県立大学名誉教授
農学博士 横越英彦 著
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