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茶柱コラム

〈食と美と健康〉~魚の百神~魚の油は脳を守る                       

日本の子供は、頭がいい?

 一昔前、スーパーの魚売り場の前を通ると、「魚、魚、魚~魚を食べると~頭が良くなる~」という歌が流れていた。どうも「魚は頭に良いらしい」。そう言われはじめたのは、「日本人の子供たちが,欧米人の子供と比較して知能指数が高いのは、長年魚を食べてきたことによるかも知れない」というイギリスのマイケル・クロフォード教授の著書「THE DRIVING FORCE」が出てからである。

魚に含まれる特有の油

 脳の働きとの関係で注目されているのは、DHA(ドコサヘキサエン酸)という不飽和脂肪酸である。このDHAは、豚肉や牛肉また植物油には含まれておらず、魚介類に特徴的な脂肪酸で、マグロやカツオのような大型魚に含まれています。なぜでしょうか?それは海で繰り広げられている食物連鎖で説明できます。海中の植物性プランクトンにDHAの合成素材であるαリノレン酸(必須脂肪酸の一つ)とともに含まれていて、これを動物性プランクトンが食べ、それを餌にする小型の魚がおり、この小型の魚を中型魚が、さらには大型魚が食べ、この食物連鎖により順次DHAが蓄積されるのです。

魚油は脳に重要

 魚由来のDHAは目・脳・心筋・胎盤など体の殆ど全ての部位に含まれています。脳では、細胞膜の構成成分として膜の柔軟性を増しており、情報の伝達、ひいては細胞の働きも良くすると言われています。文字通り「頭を柔らかくする物質」といえます。DHAは情報伝達部位のシナプスに特に多く、脳総脂肪酸にしめる割合は成長に伴い増加することから、脳の発達にDHAが重要な役割を果たしています。

 αリノレン酸の多い飼料を与えた母親から生まれた仔ラットの脳ではDHA含量が高くなっています。αリノレン酸の少ないベニバナ油を与えたラットでは、脳リン脂質中のDHA含量が少なく、学習能も低いのです。老齢ラットでは、若いラットに比べ、総脂質中のDHA含量が低下しています。このようなラットに、イワシ油を10%含む飼料を1ヶ月間投与すると、脳脂質中のDHA量が増加し、幼若ラットと同じになったのです。このことは、イワシ油の摂取により老化ラットの記憶学習能が若齢ラットと同じになる可能性があることを示しています。人の初乳には必須脂肪酸やDHAが含まれていますが必ずしも十分ではないので、DHAを強化した粉乳が市販され、赤ちゃんに与えられています。

〈2021年5月 / 茶柱コラムより :旧竹沢製茶HPに掲載分〉

静岡県立大学名誉教授
農学博士  横越英彦   著

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